科学者共同体におけるエンハンスメント体験率

asahi.com「学者もドーピング? 「集中力高める」2割が服用と英誌」

http://www.asahi.com/science/update/0411/TKY200804110041.html


それにしても、「ドーピング」とはいささか問題のある見出しである。


ドーピングという言葉にはすでにその行為が反倫理的だという意味が含まれている。だが、知的エンハンスメントが反倫理的であるか否かはこれから探究すべき問題であり、すでに合意の得られているような問題ではない。運動競技と研究活動とではその競争的な性格が異なるため、同じエンハンスメントといっても、単純にスポーツにおけるドーピングとの比較で論ずることはできないはずである。


確かに「エンハンスメント」という言葉はまだ一般になじみが薄く、それもあって人口に膾炙している「ドーピング」という言葉が選択されたのだろう。しかし、ある問題に対する世論の在り方は、しばしば実質的な議論によってではなくイメージの流通によって先行的に方向づけられてしまうのである。


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