廃墟の後に

私が住むマンションの東隣には、ちょっとした小道を挟んで、古い倉庫や家屋、アパートが立ち並んでいる一〇〇メートル四方ほどの区画がある。いずれの建物も老朽化が激しく、補修もされないままなかば捨て去られたような物件もある。私はこの置き忘れられたような廃墟的な雰囲気がけっして嫌いではない。


しかし今度、それらの建物がすべて解体されることになった。哀愁もあるが、一番の問題は、その後、その区画に何が建つかである。私の部屋は三階にあるのだが、それらの建物群はすべて二階建てか三階建てであるため、日当たりや見渡しは現在のところそれほど悪くない。むしろ、都内のマンションの三階にある部屋にしてはずいぶんと開放的であると言える。それは私が現在の部屋への移住を決めた一因をなしている。


だが、もしその区画に高層マンションが建つとすれば、私の部屋は日照と眺望の半分を失うことになる(私の部屋は角部屋である)。その土地の利便性を考えれば、マンションの建つ可能性はけっして低くはない。まだ何も告知されてはいないが、その可能性を思うと暗鬱な気持ちになる。


今はせめて、隣に何ができたら喜ばしいかを夢想して気を紛らわせている。一番は釣り堀である。ある晴れた日曜日、親子連れが熱心に釣り糸を垂らす光景を眺め下ろすのは、何と牧歌的で祝福的で素晴らしいことだろう!